ポポーのハート4 

ポポーのハート4

赤目の男

 

 

 ヒューと、その男は、矢の刺さった

 

ウサギを間にして対峙していた。

 

男の手には剣が握られていて

 

切っ先はヒューに向けられていた。

 

 

ヒューの、前にいるその男は、

 

ヒューよりも一回りほど大きく

 

逞しい体をしていたが、体の

 

あちこちには無数の傷があり

 

その上を黒い瘡蓋が覆っていて、

 

その目は、真っ赤に充血しギラ

 

ギラと怪しい光を放つてヒューを

 

睨みつけていた。

 

 

 


 ヒューはアイに、自分のそばから離れる

 

ように目配せをすると、ヒュー自身も

 

腰の剣を抜いて身構えた。

 

 

その赤目の男は地の底に響くような

 

声で言った。「獲物はおれが貰う!」

 

ヒューは、無言で身がまえたままだった。

 

二人の間を、つむじ風が枯葉を舞い

 

あげながら突っ切っていった。 

 

 

 

だんだんと強くなった風が、森の

 

木々の間を音を立てながら吹きぬけ

 

て行った。

 

「うせろ!俺の目の前からうせろ!」

 

赤目の男が吠えるように言った。

 

赤目の男とヒューとの間合いは

 

徐々に近づいていった。


 

赤目の男が、一歩踏み出すのと同時に

 

ヒューに向かって剣を振り下ろした。

 

ヒューはその切っ先を体をスゥエーして

 

避けようとしたが、ヒューの左耳は

 

半分断ち切られていた。

 

 

 

ヒューは体の向きを変えると、

 

赤目の男めがけて剣を振り下ろしたが。

 

赤目の男は、それを剣で防いだので

 

二人の剣と剣が激しくぶつかり合い

 

凄まじい火花が散った。

 

それからは二人の息詰まる切り合い

 

が果てしもなく続くかと思われたが。


 

ヒューが赤目の男の後ろに回り込もう

 

としたすきに、赤目の男がヒューの脇腹に

 

強烈なタックルをぶちかまし、倒れ込んだ

 

二人は激しいもみ合いとなって転げま

 

わったが。体力的に勝る赤目の男に

 

ヒューは仰向けに組み伏せられて

 

しまった。

 

ヒューの上に馬乗りになった赤目の男は

 

獲物を仕留めた獣のような薄笑いを

 

浮かべると。

 

男は、取り出したナイフをでヒューに止

 

めを刺そうとした。

 

 

しかし、ヒューが最後の力を振り絞って

 

激しく抵抗したためにナイフはヒューの

 

肩先をかすめて地面を突き刺した。

 

ヒューは、そのすきに手の先に触った

 

矢尻で赤目の男の顔を思い切り

 

突いた。

 

矢尻は、赤目の男の頬に突き刺さり

 

ざっくりと切り裂いた。「ギヤッー」っ

 

と赤目の男は悲鳴を上げながら

 

後ろにのけぞった。赤目の男の

 

頬からは激しく血が流れ落ちた。

 

赤目の男の中に、猛烈な怒りが込み

 

上げて、気勢を上げながらヒューの心臓

 

めがけて赤目の男が、ナイフを振り下ろそう

 

としたその瞬間。